当院では、がん終末期患者を含む地域住民を支えることを目的に都道府県に設置(委託)されている地域包括支援センター(全国約2000施設)又は地域包括支援センターと連携している介護支援事業所などに所属する保健師、看護師、社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、その他職員様を対象に、これら職員様が担当したがんでお亡くなりになった患者様の緩和ケア・医療の内容の実態をWEBアンケート形式で全国調査します。
【研究課題】
患者の終末段階における療養生活や医療に関する研究
【研究機関名及び本学の研究責任者・実務担当者氏名】
この研究が行われる研究機関と研究責任者・実務担当者は次に示すとおりです。
研究機関:東京大学医学部附属病院
研究責任者:住谷昌彦(東京大学医学部附属病院 緩和ケア診療部 准教授)
実務担当者:長谷川麻衣子(東京大学大学院医学系研究科 疼痛・緩和病態医科学講座 特任准教授)
担当業務 データ収集・データ解析
【研究期間】
2021年6月10日から2025年12月31日まで
【対象となる方】
地域包括支援センター又は地域包括支援センターと連携している介護支援事業所などに登録されており、かつ3年以内にがんの患者様を担当した保健師、看護師、社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、その他職員様を対象としています。
【研究の意義】
がん患者の遺族を対象とした、人生の最終段階の療養生活や受けた医療に関する全国調査結果(国立がん研究センター公表)では、亡くなる1ヶ月に痛みを有していた割合が22.0から40.4%であることが発表されました。痛みや何らかの身体的苦痛を感じていた主な理由として、医師が痛みに対応したが不十分であったこと、診療回数・時間が不十分であったことが指摘されています。医療・ケアに関する医療従事者との話し合いは50%以下に留まっており、ご家族の介護負担感や死別後の抑うつ症状にも関連していることが推定されます。
この調査に加え、厚生労働省が公開している都道府県別の医療用麻薬の使用量と国立がん研究センターが公開している都道府県別がん死亡者数に基づき、世界保健機関WHOががん終末期に尊厳ある死を迎えるために必要なオピオイド鎮痛薬の必要量に対する実使用量(オピオイド充足率)を調査した研究では、都道府県別のオピオイド充足率の格差が最大で40%程度あり、さらに、日本全体でも70%台の充足率であることが報告されています。
したがって、症状緩和の普及についてより一層の対策と、死別後の遺族ケアを想定した医療の整備や家族に対する支援体制が必要と考えます。
【研究の目的】
本研究の目的は、適切な緩和ケア提供体制の整備を進め、医療用麻薬の使用を含めたがん死亡患者の終末期医療の質を調査することです。全国の地域包括支援センター又は地域包括支援センターと連携している介護支援事業所などの職員様を対象としており、がんで亡くなられた患者様を担当した際の緩和ケア・医療の内容の実態をWEBアンケート形式で調査します。これにより都道府県別の緩和ケアの診療の質や体制整備について検討します。
【研究の方法】
本研究調査は、都道府県に設置(委託)されている地域包括支援センター(全国約2000施設)又は地域包括支援センターと連携している介護支援事業所などに在籍する職員様を対象としたWEBアンケートです。過去3年以内に担当した、がんでお亡くなりになられた患者様とご遺族について、情報提供を依頼します。調査に関連する資料を東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部と情報管理が堅牢なWeb上で共有します。その後、東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部で個人が特定できる情報を含まない状態にして解析します。
質問項目は以下の通りです。
- 研究参加者の属性:性別、年齢(10歳刻み)、資格の有無と取得後年数、所属するセンターの都道府県市町村、センター所属年数、精神疾患の有無
- 地域包括支援センター又は地域包括支援センターと連携している介護支援事業所などの職員様が3年以内に担当し、かつ亡くなられたがん患者様(1名から最大5名まで回答)の年齢、性別、がん種、同居家族有無、医療費・介護保険サービスの利用状況、医療用麻薬の使用有無と使用期間、診断からの時期、救急搬送、ADL、認知症、希望する最期の場所、病状認識
※尚、患者様個人を特定できるような質問は含まれません。 - 亡くなる前1ヶ月間の療養生活の質:亡くなる前の療養生活の質・苦痛
- 亡くなる前に「痛み」があった理由(亡くなる前に痛みがあった場合のみ)
【個人情報の保護】
この研究に関わって収集される試料や情報・データ等は、外部に漏えいすることのないよう、慎重に取り扱う必要があります。東京大学大学院医学系研究科緩和ケア診療部において収集するのは、研究対象者である地域包括支援センター又は地域包括支援センターと連携している介護支援事業所などの職員様の回答データで患者様の個人情報は収集しません。なお、次年度以降に追加調査を実施した場合にご協力いただけるとご同意いただいた方のみ、お名前とメールアドレスを任意でお聞きしております。ご記入いただきましたお名前とメールアドレスは、当アンケートの回答とは切り離したうえで、2025年12月末日まで、東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部、東京大学大学院医学系研究科疼痛緩和病態医科学講座で厳重に保管し、次回調査のご依頼にのみ使わせていただきます。
研究データ資料については当診療部において住谷(管理責任者)が、鍵のかかるロッカーで厳重に保管します。また、研究結果は、個人が特定できない形式で、学会等で発表されます。収集したデータは厳重な管理のもと、研究終了後5年間保存されます。
この臨床研究では、研究対象者である地域包括支援センター又は地域包括支援センターと連携している介護支援事業所などの職員様が過去3年間にがんでお亡くなりになった患者様についての臨床経験を回答していただきますが、ご回答後にこの研究に使用されたくないとお考えになった場合には、2022年1月31日までに(回答期間終了後、3カ月以内を目安に)下記連絡先宛にご連絡ください。地域包括支援センター又は地域包括支援センターと連携している介護支援事業所を利用した都道府県名と市町村名、がんで亡くなった患者様の年齢と性別が一致した場合にのみ研究にデータを使用しないように収集されたアンケート結果から削除します。また、地域包括支援センターへ患者様からご連絡があった場合も、下記連絡先宛にご連絡ください。ご連絡をいただかなかった場合、ご了承いただいたものとさせて頂きます。ご不明な点がありましたらお尋ねください。
研究の成果は、研究参加者の個人情報が明らかにならないようにした上で、学会発表や学術雑誌、国内及び海外のデータベース等で公表します。
調査期間中の回答調査票結果は調査会社のCloudに送信・保管され、調査終了後は東京大学医学部附属病院にて保管します。調査終了後の保管期間を5年間とし、保管期間終了後はデータを消去します。匿名化されたデータについても研究終了後の保管期間を5年間とし、保管期間終了後はデータを消去します。保管の延長について倫理承認が得られれば、改めて情報公開による保管に対する同意の拒否の機会を提供した上で、研究終了後も引き続き、データを保管します。
この研究に関する費用は、東京大学医学部附属病院 緩和ケア診療部、東京大学大学院医学系研究科疼痛緩和病態医科学講座の運営費から支出されています。
本研究に関して、開示すべき利益相反関係は以下となります。
長谷川麻衣子(社会連携講座):塩野義製薬株式会社、日本臓器製薬株式会社、株式会社ハートフェルト、医療法人愛和会
尚、研究参加者への謝金はございません。
【問い合わせ先】
東京大学医学部附属病院 緩和ケア診療部 住谷昌彦
住所:東京都文京区本郷7-3-1
電話:03-3815-5411
2021年9月1日