令和元年12月より、山田芳嗣名誉教授の後を受けまして本教室の教授に着任いたしました。

本講座は、昭和27年に開講した、日本最古の麻酔科学教室です。故山村秀夫名誉教授が、講座担任に就任後、米国へ留学して近代麻酔科学を持ち帰り、その普及、教育、研究にあたりました。麻酔とは単に患者を眠らせるだけとする従来の考え方から、麻酔学を臨床薬理ならびに臨床生理として体系づけるための努力をされました。さらに、麻酔とは患者を手術の痛みから救うばかりでなく、患者の生命を守ることであるという考えを第一線に立って実践されました。

以後、故稲田豊先生、故沼田克雄先生、花岡一雄先生、山田芳嗣先生という歴代の教授によって、その伝統が受け継がれてまいりました。この間、薬剤の進化、モニタリング技術やデバイスの進歩、麻酔科医師のスキルの向上に伴い周術期医療の安全性は飛躍的に向上しました。その結果、手術対象患者が拡大し手術件数が増加しました。手術麻酔分野では心臓手術、臓器移植、産科麻酔のサブスペシャルティ化、周術期管理の一環としてのICUや救急集中治療、疼痛に対するペインクリニック、緩和医療など、麻酔科医師のもつ能力を生かす領域は広がってまいりました。

麻酔科という診療科は、特定の疾患や患者集団と向き合う診療科とは異なり、一人の患者を通じて多くの外科系、内科系診療科と連携した医療を行うという診療科横断型組織として重要な役割を持っています。手術診療、急性期診療を担う、病院のインフラと言えます。

手術患者の最終的なアウトカムを良くするために、術前の評価や状態の最適化を目指す取り組みも成果を見せております。今後も、周術期管理全体を束ねるマネージメントの能力や、院内の急変を未然に防ぐ能力、困難なケースの管理能力で、麻酔科医師の能力は期待されております。

このように、十分な能力を持つ麻酔科医師に対する医療界、社会からの需要は、今後もとても高いと考えています。

当教室は、今後も継続して、能力の高い麻酔科医師を養成し、周術期医学、集中治療、ペインクリニックのみならず、麻酔科学、生体管理医学、侵襲制御医学ひいては医学全体の発展に資するような成果を発表し続ける組織でありたいと考えております。

麻酔科痛みセンター 教授

内田寛治

東大麻酔科へ飛び込んできてください。

私たちが育てる麻酔科医

  1. Vigilanceと危機管理能力を合わせ持つ麻酔科医師
  2. 周術期チームを束ねる、優しさをもったマネージメントができる麻酔科医師
  3. 臨床にとどまらず、様々なことに好奇心を持って取り組む姿勢を持った医師

当教室で活躍しているスタッフは、それぞれが個性豊かですが、総称すると「まじめ」がもっとも当てはまるように思います。日々の忙しい臨床業務を、個々が真剣に取り組んでいます。